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出会い、思い出、そして旅立ち

                

田村光男

 

 

何気ない「出会い」が、とても重要な何かを心のどこかに残している。

「悔い」という過去へのしがらみではないのだけれど、今生きている僕の体のどこかで、

地軸に向けた垂直の振り子のように、現在と過去をつらぬいて生きているものがある。

 それは遙か昔の一期一会の瞬間のようでもあるが、拭い去れない記憶の持続のようで

もある。そしてそれは時折、止めどなく懐かしい思いをつれてやってきて、気づくと僕の

心は優しい絆に導かれるように、隅々までが穏やかで静謐な時間で満たされてしまう。

 「思い出」なんて言いたくない、なぜなら生きるとは常に新たな旅立ちへの決意のこと

を言うのだから。

  いつもそう思って生きてきた。

  出会い、そして旅立ち・・・。

  ならば、この懐かしい心たちとともに旅立とう。

  今、自分がこう述懐することをすこし許すことができる。

過去と歴史は現在へつながるしがらみのようではあるけれど、心の絆は過去の思い出を

未来へとつなげてくれる架け橋なのかもしれない。

  そう思うようになった。

  出会い、思い出、そして旅立ち。

  それでいい。

たくさんの懐かしい思い出を抱えて、旅立ってゆこうと思う。

 

                                                    

~ある寄稿文より

 

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